素人処女を迎え

7年前から求めていたもの。

 

 

も く じ

 

 

 

1 貴殿の話

この一連の出来事と締めくくるとすると、僕よりも貴殿が主人公であった。

僕が主人公だったはずなのに、どう考えても貴殿視点の物語の方が面白いので、悔しいけど譲りましょう。僕の「階段噺」はメインディッシュではない。

 

この男との関係性は就活仲間である。去年の1月に初めて出会った。たまたま隣の席で、趣味も微妙に合うくらいで、強固な繋がりは特になかったが、僕が3月辺りに大恋愛をしていた男や拗らせ恋愛相談などをぶちまけていた。その後、内定報告をしたり遊ぶ約束をして奇跡的に関係性が続いており、1年ぶりに連絡が来た。もう忘れられていると思っていたくらいだったので、僕を記憶してくれていたことがとても嬉しかったのである。

お互いにBADな性質を持っているので、自粛期間の痺れを切らし、羽を広げて遊ぶ約束をした。僕がアルコール入りのパフェの店なんて指定したらいけなかったのだけど、店の雰囲気が薄暗くてムードがとても良かった。相手が僕の恋愛近況を聞くし、僕も超話したかったので拗らせた性事情をやっぱり沢山話してしまう。あれから1年、処女は卒業していないのかと再確認され、その会話をしてしまった以上、目の前に経験熟練の異性がいるという状況下で、さすがに予想はつくだろう。

これからどうするか?という会話が生まれた時に、僕は相当躊躇した。期待している癖に全てが未知だったから。しかし断ったらもうチャンスなんてないと思った。目先にあるまたとない誘いを見す見す逃すのか、、、?嫌になったら直前で逃げれば良い。今回はそこそこに腹は括っていた。別にこの男のことは恋愛的に好きではない。大丈夫。この人の事は好きじゃないし、嫌いにもならない。

ただ友人に対して、急に「男」として認識すると半信半疑になってしまった。

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2 僕の背中を蹴ってくれ

ホテルに入って、話すだけで俺は満足だ。

常套句のような言葉を使っていたが、チェックアウトが明日の昼の時点でこのツインベットで一緒に寝ることは明確ではないか。何もない訳がない。備え付けのカラオケだけが僕の唯一扱えるものだった。

部屋に入ってから3、4時間駄弁ったり、人気のない日曜の渋谷のコンビニに酒を買いに行ったりして、異次元並みにイチャついているカップルを横目に見ながら、嗚呼僕、結構若い人らしい事してんじゃん、、、、、と閑古鳥が鳴いているホテル街で彷徨きながら感じていた。そもそも家に居るようなリラックスした時間を他人と過ごすのが久々過ぎて、相当感覚がバグっていた。ラブホ、中々落ち着くやん、、、

 

一緒に風呂に入ると仲良くなると言う彼の定説を教えられたが、勿論異性に己の裸を見られたことがなかった。そりゃそうだ。気持ち的に、恥ずかしさを感じるよりも、もうどうしようもなかった。いつもみたいに一旦考えてから行動することができない。成すがまま。。。

そもそも順番が何もかもおかしい。世間一般と僕の知識の順番とバグってる。なんで裸からスタートなんだよ。ちゅーは!?ねえ!?僕の初キッスと手を繋いで抱き合ってから恥じらってジワジワ事が進むみたいなシチュエーションは何処行ったの!?!?

 

エンタメ性の高い風呂に入った。貴殿は絶対に手を出さない。そもそも女体に興奮するのはAVだけであって、今ある女体は僕の資本でしかないのだけど、これに発情するのはどう考えても理解できない。意味不明だった。僕はこの体を通してコミュニケーションをしたことがない。 

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3 色気皆無の言語コミュニケーション

セックスは非言語がメインである。感覚優位、だがしかし、僕は言語コミュニケーションしかできない女であったので、「言葉」でしかコミュニケーション手段がなかった。

まあ本当に色気と言うかムードもクソもない。嗚呼僕のセックスはこうだったのか、と分かった。辛うじて自己は乖離していない。大丈夫、自我は保っている。

「女」になった自分が気持ち悪いか、別段そうはならなかった。きっと演技をしていなかったから。しなくても「素」で居させてくれたから。

少女革命ウテナ」を思い出した。少女が大人になる自己改革の話である。

 少女革命ウテナ Revolutionary Girl Utena | 少女革命ウテナ, 90年代 ...

不明点をリアルタイムで全て聞いた。貴殿はバカ正直な僕に対して全て丁寧に答えた。

そして、僕がどう見えているか評価をした。このどうしようもなく成長した汚い身体を貴殿は認めた

僕の感情が1番分からなかった。全ての肯定を全て否定した。「否定」されなければ僕のアイデンティティでなくなる。僕は「認められない」のだ。

「肯定」は終了であり、私の存在理由ではない。僕の思考が停止する。

嬉しさと感じないといけないのに、心から嬉しくない。嫌悪感を抱いた訳でもない。

 

何を感じたら良いのか、本当に分からない。

 

 

4 素直になりたい

「頭と反比例してまんこだけは素直。なんでだろうね。」

愛読させてもらっている帝歌ちゃんhttps://twitter.com/6yubikanojo?s=20 が言ってた。

たぶん心は感じてないけど、体が感覚的に欲してる。日常的に人を見た時に、目の前の人間がエロそうかどうかって事しか考えてないし。視覚と聴覚ですぐ妄想する癖あるし、、、、、

 

***

 

貴方は進んで僕の「悪者」になった。

誰かを悪者にして、自分を正当化しないと僕は何も進めないのだ。

 

そういう風に持っていかねば、そういう風にはならない。

言われるが儘に、こうして、と言われれば全部やる。相手がそうして欲しいのなら。

普段は年上のお姉様にどちらかというと食われる側の貴殿が今回僕のようなチキン処女を食う側の立場になるのは大層新鮮な体験であったようだが、僕らはホテルを出た後、非常にふわふわしていた。

満たされた、、、、、、

 

無駄な気持ちが一切無い。やけにクリアな月曜昼間の渋谷。

みんなは仕事をしてるんだよな、、、当事者にしか分からないこの感情。

 

 

***

 

感情が追いつかない儘、満たされた後、

あの空間で彼は僕を串刺しにするような言葉を教えてくれた。

久々に金槌で殴られた。

 

貴殿のここ1年の動きと、今日に至るまでの核心が掴めてしまったから。

 

彼女が死んだ。

 

 

 

寂しい。

彼はとってもさみしい。

 

。。。。

 

 

 

感情がボワ〜〜〜〜〜と流れ込んできて、

家に着き、思い出を反芻すると、言語化できない涙が独りでにボロボロ流れ、

私は満たされ、貴方もきっと満たされ、たぶんとっても幸せだった。

一体誰に、どこに、感情を置いたらいいのか分からなかったけど。

 

 

貴殿もまた、僕と同じ人間であった。

 

心がどんどん幼くなってゆく。。。